SWISS THEATRE

アルプスを越えて COURAGE MOUNTAIN

これは「アルプスの少女ハイジ」の続編、ハイジが上の学校へ行く頃のお話。
しかし何といっても驚く事は、あの勉強嫌いで少し頼り無い所のあったペーターに、あの二枚目俳優チャーリー・シーンが扮している事だ。ペーターファンにとって嬉しい限りなのか、それともイメージが違うだろうか、とにかくかっこいいペーターを観る事が出来る。

ハイジ(ジュリエット・キャトゥン)はクララのおばあさんの遺産で、北イタリアにあるブルッキング女学院に入学することになるが、ハイジは遺産を受け取る事に抵抗を感じていた。おじいさん(ジャン・ルーベス)の説得でハイジは自分が高い教育を受ける事がおばあさんの望みであると知り、入学を決意する。ペーターもすでに18歳、ハイジがイタリアへ向けて出発する朝、ペーターも軍隊に入隊する。いつのまにか大人になっていたペーター。その日は、お互い新しい人生への転機となった。

北イタリアのティヴォルノに列車で到着したハイジは、その駅で孤児のクラリッサとジョヴァンニの二人と出会う。ハイジは校長のヒラリー先生と学校へ、二人の孤児は孤児を預かる施設の経営者ボネリに連れて行かれた。初めは学校に馴染めなかったハイジだったが、徐々に学校にも慣れ、他の女生徒とも仲良くなり、順調に学園生活を送れるかのように見えた。しかし、イタリアとオーストリアとの緊張が高まり、イタリア軍がブルッキング女学院を接収してしまう。
ハイジをはじめ女生徒達は、クリスマス休暇より数週間早く親元へ返される事になったのだが、ハイジを含む4人の生徒は家族との連絡が取れず、ヒラリー校長は彼女達を兵隊達のいる学園で預かろうとするが、知事の命令でそれは果たせず、代わりにハイジ達4人は強制的にボネリの施設に入れられてしまう。

ボネリの施設はひどい所だった。子供たちを強制的に石鹸工場で働かせ、働けなくなり死んだ子供は排水溝に捨てていたのだ。食事も満足に与えられずに、ついにハイジ達女学院の生徒は、駅で出会ったクラリッサとジョヴァンニと共に施設を脱走する。しかし、すぐにボネリに追いつかれ、ジョヴァンニは捕まってしまう。何とかボネリの手から逃れたハイジ達は、政情不穏なイタリアから逃れるためにスイスに向けて国境近くまで来るが、そこで戦争(第1次世界大戦)勃発、イタリア軍とオーストリア軍の戦闘に巻き込まれてしまった。砲弾の飛び交う中、やっとの思いで戦闘を切りぬけたハイジ達は、アルプスを越えてスイスへ行く事を決意する。

その頃、ヒラリー校長はハイジ達4人の生徒の消息を知る。と、同時にボネリにも彼女達がスイスに行こうとしている事が分かってしまった。自分達の悪事がバレてしまっては立場の無いボネリは、ハイジ達を事故に見せかけて殺そうと企み、後を追うのだった。ハイジのおじいさんの所にも連絡が入り、ハイジが山を越えて帰ってくる事を知る。おじいさんはスイス軍の駐屯地に行き、ペーターにハイジの捜索を頼む。まもなくアルプスは人を寄せ付けない冬の山へと変わるだろう。ペーターはすぐにイタリアへ向けて出発した。北と南から、ハイジの逃走劇はアルプスの真っ只中へと突入して行く。アルプスは厳しく、登山靴も無く、食べ物もろくに食べてないハイジ達の足は遅い。そしてついにボネリに追いつかれてしまった!

クララやフランクフルトの面々はこの作品には登場しない。だが、未だ子供のままのハイジと彼女の大人になったペーターに寄せる淡い恋心が、今までの「ハイジ」の続編には無い設定で興味深い。ハイジの少女からレディーへと成長していく1ページをアドベンチャー・タッチで描かれている。ロケハンは何処で行われたのだろう。私には分からないが、おそらくカナダではないだろうか。とにかく、大人から子供まで楽しめる娯楽作品には違いない。

アルプスの少女ハイジ HEIDI (実写版)

この話は、小説であれアニメやテレビドラマであれ、誰もが一度は見たことがあるだろう。何本も映画化されていると思う。おじいさんと山で暮らしていたハイジが、都会のフランクフルトでホームシックになり山に戻ってくる・・・・人に自然に帰れと謳っているようだ。いや、そうなのだろう。

この物語のテーマはそれだけではない。愛や友情、そして信仰の大切さ等々、心に問い掛けるものは多い。ハイジのおじいさんへの愛、ペーター、クララへの友情、そして望郷。おじいさんの愛と信仰、そして人の嫉妬や猜疑心にいたるまでこの物語は描いている。しかし、何と言ってもこの物語の魅力は、その美しいストーリーや自然にあるのではないだろうか。ハイジやおじいさんをはじめ個性的な登場人物や、緑のアルプやアルプスの夕焼け等、美しい自然描写。本当に大人から子供まで感動させる物語だと思う。

実際に舞台となったマイエンフェルトに行ってみると、映画で描かれているような高い山はなく、おじいさんがハイジに名前を教える山、ファルクニスさえもそんなに高い山ではない。しかし、牧歌的な村の雰囲気はこの物語が書かれた当時そのままのようだ。この映画はマイエンフェルトと同じグラウビュンデン州の有名なリゾート、サン・モリッツで撮影されたものだ。

私がこの映画を見たのは私がまだ小学生の時で、教室の椅子を運び込んだ学校の講堂での上映だったことを覚えている。その時の印象として強烈に残っているのは、ハイジが山を見ようとフランクフルトの教会の塔に登り、都会の街並しか見えず何処にも山がなかったシーンだ。淋しそうなハイジの横顔が私の心に強く残っている。

都会での生活に窒息していくハイジの姿は、そのまま我々現代人にあてはめてみる事が出来ないだろうか?生活はどんどん便利になってはきたが、そのぶん自然との距離はますます離れていくばかりだ。それどころか自然を破壊し、取り返しのつかない状況になろうとしている。山にやって来たクララが健康を取り戻し歩けるようになるが、自然こそが人を癒してくれるのだ。今こそ我々もハイジのように自然に帰る時ではないだろうか。

アルプスの少女ハイジ HEIDI (アニメ)

言わずと知れたジャパニメーションの傑作。1974年1月から1年間、全52話からなるテレビアニメーションを再構成したのがこの作品だ。企画からテレビ放映まで7年もの歳月をかけた。テレビアニメのためにスイスやドイツのフランクフルト等に1年あまりもロケハンに行くなど、当時としては考えられない型破りな製作現場だったようだ。作品中に登場するデルフリ村は、実際にモデルとなったマイエンフェルト郊外の「オーバーロッフェル村」よりもハイジの作品にマッチしていると思う。すばらしく美しい山々、素朴な村の様子、フランクフルトのリアルな街並等。確かにこの作品の背景画は非常に美しく、臨場感がある。今では押しも押されぬ名アニメーション作家であり監督の宮崎駿氏が、場面構成として参加し、膨大な仕事を一人でこなしたというのも有名な話だ。

渡辺岳夫氏の音楽がまたすばらしい。メロディーが心に呼びかけ物語をより盛り上げてくれる。個性的なキャラクターも魅力的で、声優陣がそれを見事に演じている。テレビ放映時とこの作品とでは声優に若干の変更がある。特に気がつくのはペーターの小原乃里子女史から丸山裕子女史、クララの吉田理保子女史から藩 恵子女史への変更だ。どちらも甲乙つけがたく、それぞれの個性が出ていてまた少し違ったものになっている。

原作では、クララの車椅子をペーターが嫉妬のあまり潰してしまうのだが、この作品中にはその事はまったく出てこない。テレビアニメではクララが誤って坂に落とし壊してしまうのだが・…。私はいかにも日本的と思うのだがいかがなものだろうか。アリとキリギリスのラストが日本ではキリギリスはアリに助けられるが原作では雪の中で凍えて死んでしまうのと似ているような気がしてならない。子供に対して悪いものは見せない方が良いのかもしれない。

しかし、この作品については多くを語らずとも良いだろう。世界中で上映され、スペイン児童アカデミー賞、西ドイツ(上映当事はまだ西と東に分かれていた)ではゴールデン・ベア賞、ゴールデン・バンビ賞等の賞に輝き、世界中の国々でハイジの顔は自国の少女の顔であると賞賛された。日本でも確かにハイジの顔は私たち日本人に見えるのだが、どうだろうか。とにかく、何だかんだ言っても私はこの作品が大好きである。

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